2016-10-01から1ヶ月間の記事一覧

CHAPTER4 1

k.k

夕方の国道沿いを、最近購入した自転車で走っている。小ぶりな車輪、深緑に白を少し足したような色の、私は速くかわいく走りますって言ってるような自転車。泥除けなんていらない。ずっとこういうのに憧れてた。 さっきまで髪を結っていたヘアゴムが、今は右…

2-5 小説に

c.n

家に着くなりハルはコンタクトを外しダサい眼鏡に着替えベッドに潜り込んだ。 薄暗い部屋の中にブルーライトがハルを照らし出す。調子の悪いMacBook Airを叩き起こして食べログに繋げると早速レビューを書く店を物色し始める。全く関係のない店、とはいえ一…

2-4 食べログ

t

「 」 ハルにはたしかに聞こえた。でも聞こえたのは「 」の外枠、つまり、なんか喋ってるってことだけ。いつもと同じように、なかみの部分はなにもわからなかった。 「なに?」 念のため声に出して聞いてみたけど、神様は答えなかった。 映画はフルCGのアニ…

2-3

a.a

- 映画を観終わって館外へ出たとき、すでに外は薄暗くほんのりと冬のにおいがした。 月はまあるいカップケーキのように膨張し、都会のビル間から顔をのぞかせていた。 「 」

CHAPTER3 3 またしてもブラックホール

c.n

そのままわたしはわたしのなかのブラックホールに落ちていった。 どこからも光は射してこない無限の闇と世界。 ふたつめのブラックホールだ。いや、正確には”裏”のそれだ。 前にも来たことがある。それも一度や二度ではない。気づいたときにはもうそうなって…

CHAPTER3 2 ブラックホール

t

そのままわたしはわたしのなかのブラックホールに落ちていった。 持ってきたiPhoneがぬるりと手から滑り落ちて 拾わなきゃと慌てて手を伸ばしたそのとたん、 自分もぬるりと落ちた。 どこからも光は射してこない無限の闇と世界。 ブラックホールのなかは真っ…

CHAPTER3 1

a.a

- 「わたしにはなにもない」 久しぶりに口から出た言葉は、ひどく湿った音だった。 パソコンの灯りだけが煌々と光る暗がりにひとり、膝に顔をうずめてわたしは無意識に呟いていた。 いやぁでも、本当になにもないかと問われるとそうではないのかもしれない。…

2-2

c.n

ハルが「神様」を鞄にしまおうと少し身体をひねったとき、ちょうどガラス越しによく知る後ろ姿が見えた。「神様」と入れ違いに鞄の中からiPhoneを取り出し、LINEを開く。 am.11:27 ハル 「おはよう 今日暇だったら夜会おうよ」既読 am.11:28 ユウ 「おはよ〜…

CHAPTER2 1

t

「不毛やな、その残業はだから不毛」 そう言いながらほとんど手をつけず冷めてしまったままにしている関西弁の若いサラリーマン二人のタリーズのTマークの入ったコーヒーカップを横目で見ながら、ハルはテーブルの上に出した家の鍵に「神様」をつけることに…