2-4 食べログ

「   」

 

ハルにはたしかに聞こえた。
でも聞こえたのは「   」の外枠、つまり、なんか喋ってるってことだけ。
いつもと同じように、なかみの部分はなにもわからなかった。

 

「なに?」

 

念のため声に出して聞いてみたけど、神様は答えなかった。

 

 


映画はフルCGのアニメで時間がちょうどぴったりということ以外なんでこれにしたのか自分でもわかんなかった。

ユウなら「やべえな」を連発しただろうなと思ったけど、感想はそれくらいだった。

 

それよりもハルはやることがあった。
早く帰って食べログに口コミを書くのだ。
いや、正確に言えば、口コミじゃない。小説を書くのだ。
食べログのなかに勝手に小説を書くのだ。

さらに正確に言えば、誰にも気づかれないようにまったく関係のない店の口コミ欄に小説を連作していくのだ。

 

ちょっと待って、それってなにどういうこと? もしかして、え、なんなん、ちょっと待ってそれやばくないハル?
この前親友と思ってたカナに表参道の展示会帰りにちょっとだけ話したらキモい的な反応きてちょっとツラみあったけどそれはしょうがない。

 

出来立てのゴハンに手をつけないバカな友だちや平気で嘘をつく恋人に腹を立てながら、ハルが見つけた今いちばんの愉しみなのだ。

 

誰にも奪わせないの。