2-5 小説に

家に着くなりハルはコンタクトを外しダサい眼鏡に着替えベッドに潜り込んだ。

薄暗い部屋の中にブルーライトがハルを照らし出す。調子の悪いMacBook Airを叩き起こして食べログに繋げると早速レビューを書く店を物色し始める。全く関係のない店、とはいえ一応自分なりのルールとして行ったことのある店を選ぶようにしている。

前回は高円寺のサイゼリヤ。その前は道玄坂の鳥貴族。その前はディズニーシーのホテルミラコスタ。一番初めはそう、新宿のどん底。

今回は少し悩んで浅草の神谷バーに決めた。

 

書き出しに迷ったりはしない。

ハルの食べログ小説は今結構いいとこまで来ている。

主人公はたぶん女。若い女。

家で何かを飼っている。

通称「ふわふわ」

いったいそれが何を指すのかわからないながらも話はゆったりと進んでいっている。

ちょうどこの間のサイゼリヤにてそのわけのわからない「ふわふわ」の正体が見え始めてきたところなのだ。はやくはやくと自分を急かしながらキーボードをまあるく切りそろえた爪で叩く。

 

 

 

 

 

この新しい愉しみにはまだ誰も気がついていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

と思っている。

 

ハルはまだ。