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5-3

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部屋の真ん中に置かれた観葉植物の分厚い葉に霧吹きで水をかけ、ふわふわのタオルで丁寧に拭く。 12月の午前の低い陽がぬらぬらと照らすそれの太くしっかりとした葉脈をひとつひとつ確認しながらうっとりとした気持ちでこの時間を過ごしている。葉っぱも僕も…

CHAPTER5 1

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ガタン と、新聞受けにアレが入る音がした。 インスタントのお味噌汁を飲み干し、ゴミ箱に捨てる。 そのままゆっくりと玄関まで行き覗き窓で外を確認する。 いつも通り目があうと少年は小さく会釈をしてタタタッと駆けて行った。 僕はそいつを「ごん」と呼ん…

2-5 小説に

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家に着くなりハルはコンタクトを外しダサい眼鏡に着替えベッドに潜り込んだ。 薄暗い部屋の中にブルーライトがハルを照らし出す。調子の悪いMacBook Airを叩き起こして食べログに繋げると早速レビューを書く店を物色し始める。全く関係のない店、とはいえ一…

CHAPTER3 3 またしてもブラックホール

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そのままわたしはわたしのなかのブラックホールに落ちていった。 どこからも光は射してこない無限の闇と世界。 ふたつめのブラックホールだ。いや、正確には”裏”のそれだ。 前にも来たことがある。それも一度や二度ではない。気づいたときにはもうそうなって…

2-2

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ハルが「神様」を鞄にしまおうと少し身体をひねったとき、ちょうどガラス越しによく知る後ろ姿が見えた。「神様」と入れ違いに鞄の中からiPhoneを取り出し、LINEを開く。 am.11:27 ハル 「おはよう 今日暇だったら夜会おうよ」既読 am.11:28 ユウ 「おはよ〜…

4

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あのころとは違い、小さくなった湯船に寝っ転がる。水かさがゆっくり増えていく感覚を全身で感じる。身体をなぞる少しぬるめの水面がくすぐったくて気持ちいい。息を止めてるのに揺れるお湯。 …あぁそうだね。 小さく呟いた。心臓が動いてるのか。 なみなみ…

1

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自分のしゃくりあげる声で目が覚めた。 - 子役が泣くとき、たいていの場合はお母さんを殺してるんだって。 曖昧な昨日の夜の記憶の中でその言葉がやけにしっかり残ってる。 大人になった今、泣けって言われたら何を想像するんだろう。誰を殺すんだろうね。 -…