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自分のしゃくりあげる声で目が覚めた。
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子役が泣くとき、たいていの場合はお母さんを殺してるんだって。
曖昧な昨日の夜の記憶の中でその言葉がやけにしっかり残ってる。
大人になった今、泣けって言われたら何を想像するんだろう。誰を殺すんだろうね。
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机の上に置かれた中身が半分以上残ってるストロングゼロのロング缶、食べかけの外国のお菓子、脱ぎ散らかした買ったばかりの服。
明け方のひんやりした風が足をすくい、締め切ったカーテンをゆったりと揺らしている。
ふと思い立って隣で気持ちよさそうに寝息を立てるふわふわの鼻と口を塞いでみた。
窓の向こうでは小鳥が鳴き始め、すっかりと空も明るくなった。5秒経ったのか5分経ったのかもよくわからない中でドキドキしながら手をどける。
ふたつの小さな風船はすぐに一定のリズムを取り戻した。
ほっとしている反面、どこかがっかりしている自分に戸惑う。涼しい9月の明け方にいつの間にか汗をかいてることに気づき、着ているTシャツで拭った。
涙は出てないんだよなぁ。