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あのころとは違い、小さくなった湯船に寝っ転がる。水かさがゆっくり増えていく感覚を全身で感じる。身体をなぞる少しぬるめの水面がくすぐったくて気持ちいい。息を止めてるのに揺れるお湯。

 

…あぁそうだね。

 

小さく呟いた。心臓が動いてるのか。

 

 

なみなみになったお湯がだんだんと水になっていく音をききながら心臓以外を動かさない努力をする。二時間くらい経ったかな。そろそろだ。

お風呂場のドア越しに叫ぶ声が聞こえる。はぁ。

 

「ネーーーーンェ!!モ#/nニleハュ☆♪んラーpカシ$°ャ÷*ッ€ッンァにーー!!」

 

はいはいと生返事をしながらその辺にあったバスタオルで身体を拭きひたひたと少し湿った足の裏で部屋に戻る。

いつの間にか開けっ放しの窓の向こうでは強い雨が降っていて、窓際の床には水溜まりができ始めていた。

小さく丸まったふわふわはうらめしそうにこっちを見ている。時計を見るとちょうど正午を5分過ぎたところだった。

伝わっているのかどうかわからないけど精一杯申し訳なさそうな顔をしながらわたしは台所に立つ。冷蔵庫から牛乳とオレンジを取り出してミキサーに入れる。

 

「砂糖も」

 

無視するともう一回。

 

「砂糖も入れて」

 

窓際の瓶からひとさじすくって砂糖を入れ、ミキサーのスイッチを入れる。小さな部屋は轟音でいっぱいになり、ふわふわは耳をふさぐ。大きめのマグカップにそれを注ぐととととっと駆け寄ってきた。ちょうどわたしの腰くらいのところにある栗色のふわふわの髪の毛を撫でながらテーブルまで歩く。 …わたしのふわふわ。わたしのモンブランちゃん。わたしのピーターパン。わたしのかわいい男の子。